岩永先生「糸満晴明病院での研修を受けてみて」

岩永先生「糸満晴明病院での研修を受けてみて」

「精神科専門医研修プログラム ゆい」は、平安病院(基幹施設)と県内6つの医療機関(連携施設)が連携して、専門的な研修を行い、精神科専門医の取得を目指すプログラム(原則3年間)となっています。3年目は連携施設での研修が中心となり、2022年4月より4ヵ月間、糸満晴明病院で研修させていただきました。

糸満晴明病院での研修

 沖縄県は飲酒者割合が全国平均と比較して非常に高く、平成23年度の人口動態統計によれば、男性のアルコール性肝疾患の死亡率は全国平均の約2倍と、飲酒問題が切っても切れない関係となっております。そのような状況下で、糸満晴明病院にはアルコール・薬物使用障害治療専門病棟があり、入院患者さんに向けてアルコール依存症リハビリテーションプログラム(ARP)を実施しています。私はその専門病棟を担当されている平田雄三先生の指導の下、アルコール使用障害で入院されている患者さんを担当させていただきました。
 ARPに関しては、病棟スタッフの役割が決まっており、最初は入院患者さんと共にプログラムに参加させていただきました。また、研修の後半では医師が担当する「薬物療法」のプログラムにて治療に用いる薬剤に関して講義をさせていただきました。
 ARP以外の病棟業務としては、基本的に午前午後と1日2回、病棟回診を行いました。毎週火曜日は指導医、初期研修医とチームを組んで全体回診を行いました。入院前の飲酒行動に関する振り返り、身体疾患の確認、入院生活での不満や要望、退院後の生活設計等、経過に合わせた診察や面談を実施します。アルコール使用障害の患者さんは、肝障害や糖尿病等身体疾患のある方や、うつ病等精神疾患を合併している方もいますので、内科的な知識や他の精神疾患の治療に関しての知識も必要となります。
 外来での研修は、最初は指導医の診察への陪席から開始し、2ヵ月目からは指導医の先生の指導の下で、新患対応も開始しました。また、外来再診は火曜日の午後と水曜の午前中に週二回担当しました。アルコール使用障害の患者さんが多いですが、他の精神疾患の患者さんも受け持ちました。

研修を受けてみて

 2年間勤務した平安病院でも、アルコール使用障害の患者さんを何名か担当させていただく機会がありましたが、断酒への動機づけが難しく、治療に難渋する場面が多い印象でした。アルコール使用障害も依存症状態や精神病性障害、有害な使用等、診断は多岐に渡ります。大枠としてのARPに加え、その病態に応じてどのように関わっていくかを垣間見ることができました。また、アルコール性の肝機能障害を併発している患者さんが多く、入院中断酒することで肝機能を示す血液検査値が改善していく様子を一緒に喜びながら、断酒へのモチベーションを向上させることができたのは良い経験でした。

 平田雄三先生をはじめとして、多くの先生方や病棟スタッフからたくさんのことを学ばせていただいたことに感謝しております。今後他院でもアルコール使用障害の患者さんを診察したり、入院担当となったりすることがあるかと思います。そこで「糸満晴明ではこういう対応をしていたな」と学んだ知識を生かした診療ができればと考えています。