ドクターUの幻語新作2【意識】

ドクターUの幻語新作2【意識】

【意識】いしきconsciousness
①覚醒している状態にあること。はっきりした自律的な心の働きがあること。自覚。覚醒。見当識。
②思考・感覚・感情・意志などを含む精神的・心的なものの総体
③物事や状態に対する関心や注意を払うこと

「意識」は精神医学の中でも一番理解が難しい用語です。哲学や宗教の分野にも踏み込みそうです。最近では量子力学の研究者たちもこの問題に手を出しているといううわさも聞きました。意識というのは果たして心と同義語なのか、意識が心を支えているのか、心の一部なのか、講義の資料を作るたびに思い悩みます。考えれば考えるほど頭がこんがらがって意識障害になりそうです。

アメリカの哲学者ジョン・サールの提唱した
「意識とは、私たちが、夢を見ない眠りから覚めて、再び夢のない眠りに戻るまでの間持っている心的な性質のことである」
というのが現代では最も包括的な定義であるとされますが、彼はネット配信されているTED Conferenceの中で「意識とはスピリチュアルな問題でもなくコンピューター上で動くプログラム(そこに意識などというものはなく錯覚にすぎないという考え)でもなく純粋に生物学的な現象である」と述べています。彼によると「夢も意識である」というのです。

jyonアメリカの哲学者ジョン・サール
※TED ieas worth spreading参照

脳の活動を客観的に調べる方法として脳波という検査があるのですが、脳細胞が電気的な変化を見せるというのは非常に興味深い現象で脳波の発見当時はその存在自体が疑問視されたこともありました。睡眠ステージによって脳波が変化すること、意識障害でも変化すること、脳死状態では体は生きている(心臓は動いている)のに脳波が停止することなどから脳の電気活動が意識の状態を示す指標になることは明らかで、このことからも意識は確かに純粋に生物学的現象と言えそうです。夢を見ているといわれるレム睡眠の際には起きている時と同じような脳波のパターンを示すことが見られます。このことからも夢を見ているときは意識があるといえるかのかもしれません。

先ほど研修医に脳波の講義をしながら意識というのが電気的現象としてとらえることができるのであればやはり意識というものは生物学的現象と言えるねとジョン・サール先生の講義を思い出した次第であります。ひいては意識と関係の深いと想定される心の問題を精神医学という生物学の一分野で取り扱う意義についてはしばし思いを馳せらせてしまいました。

一般的には③(物事や状態に対する関心や注意を払うこと)の意味で使うことも多いですね。「〇〇君はコスト意識が高いね。医局長に向いてますね」とか「彼って自意識過剰じゃないの?いやーね」とか、こちらの方は生物学的現象ではないと思います。脱線しました。すみません。