ドクターUの幻語新作3【迂遠】

ドクターUの幻語新作3【迂遠】

ドクターUの幻語新作

【迂遠】うえん circumstantial
① 遠回り、まわりくどい
② 役に立たない
③ 世の中の変化に疎い

「迂遠」は私たち精神科医の間では思考障害の一種とされ、てんかんや器質性精神障害(高次脳機能障害)の患者さん特有にみられる症状として経験されてきました。上記の患者さんにみられる粘着や爆発性といった特性も併存することがあることから、対応については結構苦手な精神科医も多いのではないでしょうか?

私自身も気が短いところがあるものですから
ーー「早く結論をいってくれないかなぁ。」
と、イライラしていしまい、顔に出てしまったのか
ーー「先生よー(沖縄のイントネーションで)。怒っているでしょ?」
と逆に注意されてしまうことがありました。

ごめんなさい・・・この場を借りてお詫び申し上げます。

カプランの臨床精神医学テキストでは
「取るにたらない、無関係の細事の過剰包括、論旨を把握する感覚を妨害する。」
「迂遠な患者は主題あるいは質問の答えに直接関係ない細部や題材まで過剰に言及するが、最終的には主題や質問の答えに戻ってくる。ふつう診察者は一連の陳述の関係をみながら、思考の迂遠なつながりについていくことができる」
と、ありますが主治医自身の特性によっては結構苦労されるのかもしれませんね。

kapulan

※カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開 第3版
井上令一 (監修), 四宮滋子 (翻訳), 田宮 聡 (翻訳)

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話を少し脱線します。

精神科医自身もみな特性や苦手があり、相性ってありますね。とういう話をいたしますと、精神科というのは人の心を扱うのだからしてどんな人のお話も傾聴して受容・共感するべきではないかとおしかりを受けると思います。
ただ、実際のところ精神科の先生たちも結構シャイでコミュニケーションが苦手な方が多いようにお見受けします。
もちろん私自身も含めてですけど。
夫々の診察場面を見たことがないのですがどんな先生にも馴染みのユーザーがついていらっしゃるということは、精神科の治療には相性というのも一つの治療のツールかなと推察しております。

Y先生(当ブログ編集長)は声が大きくて離れた私の診察室からお声が聞こえるのですが、耳の遠い患者さんに何度も同じ説明を繰り返しているのが気になって、私のところに来ている患者さんと一緒になってついつい聞き耳をたててしまいます。
大きな声で同じフレーズを繰り返しているのを聞いているうちに不思議な気分になって妙に落ち着きますね。
最近はその影響かもしれませんが、H田先生の声も大きくなって聞こえます。

あまり本題とは関係ありませんでしたね。失礼いたしました。

自分の思考が迂遠になってしまいました。

ちなみに②③の意味はネットの辞書でみるまでしりませんでした。文学の分野では使われているようですよ。