ドクターU幻語新作6【替え玉妄想】

ドクターU幻語新作6【替え玉妄想】

【替え玉妄想】 L’illusion des sosies, Illusion of double
よく知っている人をそっくりな別人であると認識する妄想

お久しぶりでございます。
梅雨入りしてどんどん暑くなってきそうですが部屋の空調は効きすぎて長袖を羽織ったりしてます。いかがお過ごしでしょうか。
病院ではインフルエンザに罹った患者さんもいて感染対策をしたりして実際の季節とはかけ離れた感じも覚える今日この頃です。

今回の用語は「替え玉妄想」でございます。
1923年Capgrasらによって報告され、教科書的にはコタール症候群(否定妄想)とともに妄想性障害の中の分類不能なタイプに放り込まれていますが精神科の患者様の中には比較的よくみられる症状です。
まず「妄想」という用語についてですがいろいろ定義があって、カプランの臨床精神医学テキストなど伝統的な教科書では、他者と共有できない誤った固定的(訂正不能な)観念と定義されていますが、うろ覚えですが確か中井先生がおっしゃっていた「数少ない証拠から結論を導き出し確信すること」が私的にはしっくりきます。だから妄想には事実に照らし合わせて当たっている場合と外れている場合があると思います。嫉妬妄想などがこれに当たりますね。妄想は統合失調症などの感覚の鋭敏な人たちにみられる一種特殊な能力とも言えますね。

妄想的人物誤認には4つのタイプがあるそうです。
具体的には

①既知の人物を替え玉と認識する
②未知の人物を既知と認識する
③既知の人物が別人に変身すると認識
④他人を自己の分身と認識すること

に分けています。

①がカプグラ症候群
②がフレゴリの錯覚
③が相互変身症候群
④が自己分身症候群

としてChristodoulouという学者が1981に分類したとあります
(KEYWORD精神第二版 先端出版社)

※楽天ブックスさん参照
http://books.rakuten.co.jp/rb/1200395/

どの症状も妄想というよりは錯覚のように見えますし、ドラマや小説の題材としてもよく使われますね。自分でも熱にうなされたらそうなるのかなと思います。事実これらの症候群は記憶・認知の問題として脳器質疾患で見られることがあったのですが、上記引用の論文によると、統合失調症75に対して器質性精神疾患41の割合でみられたとの結果でした。実際の臨床の現場での経験でもほとんどが統合失調症の方で多く見られるように思われます。こちらの方は同疾患に特有なアンビバレントな感情が基盤にあるように推測されます。成因論的な議論は精神病理的アプローチと神経科学的アプローチ(認知科学)の両方からあり統合失調症研究の現状と同じく未解明の部分が多いようです。

4月からT城先生が赴任されました。
初出勤の日の朝のミーティング。
T先生はA里先生の定位置の席に座ったのですが誰も気づきませんでした。
うーんコメントしづらいですね。誰か突っ込んでください。(´・ω・`)。