ドクターUの幻語新作7【既視感】

ドクターUの幻語新作7【既視感】

【既視感】きしかん déjà vu デジャブ
一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じること。はじめての経験(ある場所を訪ねる,人に会う)について,以前経験したことのあるような強い印象が起こる現象

既視感という現象は、いろいろな小説や歌詞に題材として使われまるので、皆様もよくご存じだと思いますが、いまだにその発生機序は解明されていません。
体験様式がミステリアスなため超自然的な解釈がありそういうところが不思議好きの人たちに受け入れられているのかもしれません。
先ほどもパラレルワールドの体験が混線?してきているのだという説をネットで見てしまいました。医学的には脳機能障害患者における記憶異常として解釈されることもあり、健常者では疲れや気のせいとされることも多いものと思われます。実際のところ海外の研究によると,デジャブの経験率は、健常者でも60%くらいあるらしく正常な認知過程の中で生じる現象ととらえていいようです。

デジャブが起こる原因と理由のうち、現在最も有力な説は、類似性認知メカニズムの誤作動説です。
一言でいうと錯覚あるいは思い込みということでしょうか。
高性能コンピュータにたとえられる我々の脳も時に誤作動を起こすというわけです。
先ほど体験したばかりの記憶を処理する神経と、遠い過去の記憶のための神経が重なり合う部分で混乱が生じ錯覚を引き起こすというものです。
「短期記憶」を「長期記憶」として誤って処理してしまうと「この感じ?前にどこかであったよ」という感覚を引き起こしているというのです。

テキサスA&M大学のミシェル・ホック助教授によると、「感覚情報が脳の上位の皮質領域に到達するのには、まず情報が分割されてそれぞれ別の通り道を伝っていくが、分割されても同時に皮質に到達し体験を再構築する。何らかの理由でいくつかの情報が、少し遅れて到達した場合、そのタイムラグが脳にデジャブを感じさせるのだ」と説明しています。
「感覚情報の処理に相違が生じると、分離した2つのメッセージが別々に脳に届けられる。すると脳は、遅れて届いた2番目の情報を独立したものとして理解する。しかしその情報は目の前の体験と一致しないため、これはきっと過去の体験からくるものだと“曲解”することでデジャヴが引き起こされる」ということらしい。よくわかりませんね。

外来で医局長の大きな声が聞こえます。「あれ?これって昨日も聞いた気がするけど。」
H田先生が耳の不自由なお年寄りに説明している声でした。
ああびっくり。